先日、新築住宅を紹介するTV番組を観て、その建物を設計した方に連絡を取り、設計依頼をなさった方から、検査依頼がありました。

入居後、色々問題がある中の一つに、施主がバルコニーの床にあちこちで水が溜まる事を指摘したら、施工者がこれはこんなものです。水が溜まったら履いて下さい。と云われたらしいです。設計者の方もこの事には特に触れず、溜まった水を排水口へ履いておられたとの事でした。

バルコニーの排水勾配を測定してみると、勾配が不足しているだけではなく、逆勾配になっている個所が複数個所あり、図面を観てみると、バルコニーの排水経路が図面と相違していました。更に、バルコニー防水の施工も杜撰な工事で、雨漏れに繋がる施工になっているという状態でした。

設計者には、一般的に監理業務が課せられています。この監理業務とは、設計図通りに現場が施工されているか否かを確認チェックする事です。今回検査した建物では、監理業務が出来ていなかった結果、バルコニーの排水が正しく出来ておらず、現場管理にも問題があり、誤った防水施工になっていると云う状態でした。

私が作成した検査結果報告書を、設計者に見せると、是正します。との返事があったようですが、この設計者の方も、バルコニーの排水や施工に問題がある事は、十分わかっていただろうと思います。

間違いに気づいた時に、誠実に対応していれば、問題を最小限に食い止める事が出来た事が、それを見過ごすと、更に問題は大きくなっていきます。

先般、自動車メーカーで、検査体制に違反がある事を分かっていながら、長年放置されて来た事が、今になって大きな問題になっているようです。問題が起きないように努める事が何より必要ですが、問題を発見した場合、如何に早い段階で対応出来るかで、その会社や個人の本当の質がはかられるように思います。

一度失った信頼は、簡単に回復出来るものではありませんが、問題解決に向けて真っ直ぐに取り組む姿勢こそが、信頼回復への道のはじまりのように思う次第です。