私は昨年から、地元密着型のビルダーさんからのご依頼で、この会社が建築する建物を検査する業務をお受けしています。通常、ビルダーさんは、検査があると、あれこれ是正する事が出て来るので、そのような検査が無い方が良いと考えられるのが一般的です。

しかし、この会社の社長さんは、決してそのようには考えておられず、常に質の高い建物を、お施主様へ引き渡していきたいと、強い思いをお持ちでした。そこで、私に自社物件の検査を依頼し、より良い建物造りを行っていきたいと考えられました。私はこのような真面目なビルダーさんが増える事を望んでいますので、喜んでご依頼をお受けした次第です。

新築検査の目的は、二つあります。先ず一つは、正しい施工方法を施工会社さんや各業種の職人さんに伝える事です。一般の方からすると、正しい施工方法を知らないまま施工している事が本当にあるのか?と不思議に思われるかもしれませんが、これは、大手ハウスメーカーでも事実沢山あります。例えば、下の写真は、大手ハウスメーカーの躯体検査で指摘した事項ですが、金物の取付け方が間違っています。地震の際、揺れに抵抗すべき金物ビスが、柱と合板の隙間に留められています。この取付けでは、大きな揺れに抵抗する事が出来ません。

その他、防耐火の施工方法を知らないまま施工している業者さんも大変多いです。今年も、入居前の完成検査や入居直後の検査で防耐火の違反や欠陥が見つかり、室内を解体した上で、是正する事になった建物が、大手ハウスメーカーを含め多数ありました。下の4枚の写真は、それぞれ別の建物ですが、防火被覆材未施工と云う同じ内容の建築基準法違反があります。

このような、間違った施工があれば、それを正しい施工に是正して頂く事が、新築検査の目的の一つではありますが、更に重要な目的は、ヒューマンエラーを無くす事です。製造業では、一人の人が行った仕事を、それ以外の人が必ずチェックします。それは、その人を信用していないからではなく、人が行う事には、間違いやミスが起こり得るからです。ヒューマンエラーを無くす唯一の方法は、一人の人が行った仕事を、それ以外の人がチェックする事しかありません。

但し、建築業界では、自社によるチェック体制が、出来ている施工会社は、私の知る限り、ごくわずかしかありません。このチェックがないまま、一人の職人さんが行った仕事の上に、別の職種の職人さんが、仕事を行い完成して行く建物が圧倒的に多いです。このチェックを、工事工程の節目で行うのが、新築住宅検査の最大の目的です。

まさか自分の新築する家では問題など起きないだろうとお考えの方が多いと思います。検査を行った結果、是正が無い事が一番良い事であり、私もその報告が出来る事を一番望んでいます。但し、是正事項があっても、工事中に是正すれば、問題は解消されます。体の健康診断と同じです。問題が起きてから検査会社を探し、相談頂く方も多いですが、是非、工事中の検査をご検討頂き、転ばぬ先の杖として、当事務所をご利用ください。