12月は休日なしで仕事をしています。裁判所へ出向き住宅裁判の証人尋問、複数の住宅メーカーの瑕疵検査、日帰り出張、複数件の新築検査と仕事に追われる日々で、ブログ更新が全く出来ませんでした。

今年も数多くの新築金物検査を行いましたが、是正していなければ、大地震で倒壊していたであろう建物が多数ありました。

住宅購入者は、大地震で倒壊する新築物件が造られている現状を知るべきだと思いますので、今日は耐力壁について記載します。

耐力壁とは、地震等の外力が加わっても変形しない強い壁の事です。この強い壁を造る方法は、筋かい(柱と柱を斜めにつなぐ斜材)を設ける方法と構造用面材を用いる方法がありますが、これらの耐力壁には、引抜力がはたらきます。

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そこで、耐力壁には下のように、その引抜力の大きさに応じた金物を取付け、柱が持ち上げられないようにします。

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金物検査を行うと、金物入れ忘れや取付け不良が高い確率で出てきます。

IMGP0444 ナットの締め忘れ

IMGP2163 柱とHDアンカーボルトに隙間があり正しく固定出来ていない。

3 究極は、金物を取付け忘れしている。

必要となる金物取付けがない訳ですから、地震で大きく被害を受ける事になります。

構造用面材は、柱、間柱、土台、梁に釘を打ち、その釘の摩擦力とせん断力により強度を確保します。そのため、釘はめり込み無く、決められた間隔で正しく打ち込む必要があります。

金物検査を行うと、釘打ちの不良も高い確率で出てきます。これは、正しい釘打ちが出来ない大工さんが非常に多いと云う事です。

下の写真のように、構造用面材に穴が空き釘のめり込み多数、釘打ち忘れの耐力壁、はじ釘(母材から外れた釘のこと)多数となると、釘が命の構造用面材が正しく取付けられていない訳ですから、耐力壁としては機能せず、地震で大きく被害を受ける事になります。

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建築基準法を遵守し、正しく施工がされていれば、大地震で倒壊はしませんが、損傷は受ける可能性があります。

建築基準法は、最低の基準(耐震等級1に相当)を示している法律なので、ギリギリ大地震に耐える構造になっていると云う事です。昨年の熊本の地震では、震度7クラスの地震が数日間に2回あり、1回目の地震では倒壊せず、耐える事が出来たが、2回目の地震で倒壊した新築建物が多数あったのもそのためです。要するに、1回目の地震で損傷を受けているため、2回目の地震には耐える事が出来ない。これが現行法の基準です。

元から強度に余裕がない訳ですから、金物の取付忘れ等、致命的な施工不良があれば、新築建物でも大地震で倒壊に至る事になります。

建築基準法より以上の強度を持つ、耐震等級2や耐震等級3と云った設計である方が安心できる事は確かですが、その設計が、現場に正しく反映されていなければ、結局、単なる絵に描いた餅になってしまいます。