当事務所への相談や検査依頼の内容は、大別すると、二つに分かれます。一つは、これから新築工事を行う方やこれから建売住宅や中古住宅を購入なさる方からの相談です。大きな買い物をする前提として、プロの診断を受けておこうと、お考え頂いてのご依頼です。もう一つは、既に購入した建物に色々問題が発生し、あれこれインターネットで調べた結果、当事務所のホームページを見つけて、相談頂く場合です。

先日、後者の方からのご依頼で、中古の集合住宅の検査に伺いました。この建物は、不動産業者が、全室壁床天井及び水回りをリフォームし、売りに出された住宅です。代金決済を終え、鍵の引渡しを受け、賃貸住宅から引越しなさいましたが、引越し後、色々問題があり、これでは安心して住んではいられないと云う事から、改めて賃貸住宅に戻り、今は空家の状態です。非常にお気の毒な話ですが、購入した住宅のローンの返済が始まる中、借家の賃料も支払って行かなければいけない状態とお聞きしまた。

このお宅の問題の一つは、床の傾斜です。一室を除き、廊下及び各室共に、床が、非常に施工精度の低い状態で、計測すると全室各所で傾斜しています。また、床の剛性も低く、家具や冷蔵庫等、比較的重量のある物を設置すると、床が歪み家具等が傾きます。

仲介した不動産業者及び販売した不動産業者に、改善を要求しても、一向に対応してもらえないため、弁護士や不動産協会等へ相談に行かれた結果、先ずは、住宅検査を行い、現状を調査した資料作成が必要との事から、当事務所が伺う事になりました。

今後、当方が作成した資料を元に、改めて改善要求をなさる訳ですが、問題が解決するまでには、これから相当の期間が必要になります。また、全て購入者の要望通りに事が進むかについては、これから交渉をしてみないと分らないため、日々不安を抱えておられる事と思います。

ご依頼主の今後発生する経済的負担や問題解決に要する期間、更には、精神的苦痛を考えると、察して余りあるものです。このような検査依頼があると、”もし、購入前に私が検査させてもらっていれば、購入なさることも無かっただろう。”と、思います。

購入後、問題が生じて相談頂く方におかれては、”購入前に、この様な検査がある事を知っていれば、依頼したのだが・・・”と云って頂く事が多いです。住宅検査の認知度はまだまだ低く、PR不足を痛感する次第です。