木造3階建の準耐火建築物と云っても、実際には、準耐火建築物になっていない建物が非常に多いです。私の感覚では、8~9割がそれに当たるように思います。準耐火建築物であるべき、中古住宅や建売住宅と云った、既存の建物を検査して、ちゃんと準耐火建築物になっている建物であったことは、今までの経験上皆無です。

準耐火建築物と云うのは、普通の2階建の防火木造と比べて、自ら燃え難く、火に強い建物でなくてはいけませんので、細かな規定が沢山あり、2階建防火木造と内容が大きく違います。しかし、現状は、開口部だけ準耐火仕様になっているだけで、その他は、単に普通の2階建の防火木造が3階になっているだけの建物が非常に多いわけです。

行政は、その細かな規定までを検査の対象にしていないため、検査済証も発行されてしまいます。施工業者は、今まで行政検査で準耐火になっていない事で、行政指導を受けたことが無いので、その細かな規定を知らずに建築しているため、間違った施工の建物が増え続けています。

準耐火構造は、火災が起きてこそ、防火木造との違いが発揮されるため、準耐火建築物になっていないことが、日常生活に支障をきたす事ではありませんが、ひとたび火災になった際には、人命に関わる事になります。車で例えると、エアバックがあろうがなかろうが、普通に運転する分には、何の違いもありません。しかし、ひとたび交通事故を起こし、エアバックが付いている車であるべき処、衝突事故を起こしてもエアバックが作動せず、調べると元からエアバックが付いていなかった。となると大問題です。正にこれと同じ事なのです。

この準耐火建築物の問題は、非常に大問題なのですが、大問題と思っているのは、我々のような人間だけかもしれません。

私は、準耐火建築物となる建物で、基礎から検査をさせて頂く場合は、事前に準耐火構造の留意点を資料と共に、施工者さんに伝えています。先日、その資料をお渡しした施工業者の大工さんにお会いすると、”頂いた資料にのっていた本を、私も買って毎日読んでいます。今まで知らないまま仕事をして来ましたが、正しい施工方法が、この検査を機会に勉強出来て良かったです。分らない事は質問させてもらいますが、よろしくお願いします。”と言われました。何と向上心溢れる大工さんでしょうか。そのように言われるとこれほど、嬉しいことはありません。阪神大震災のように、大火災は、大地震とセットでやって来ます。このような大工さんが数多く増える事が、大問題の解決に繋がるものと、信じて疑いません。