耐力壁とは、地震や台風の水平力に抵抗するための変形し難い強い壁を意味します。木造建築物の耐力壁は、筋かいや構造用面材で造るのが一般的ですが、筋かいを使用せず、構造用面材だけで耐力壁としている建物が多くなっています。

構造用面材は釘の間隔の違いで、壁倍率(壁の強さ)に違いが出ます。設計通りの壁倍率を得るためには、正しい釘間隔で釘を打つ事は当然の事ながら、めり込みが無い釘にしなければいけません。

2019年2月 日経ホームビルダー「釘のめり込みが危ない」の実験よると、9mmの厚さの面材に対して、3mm釘がめり込むと強度が7割弱に低下し、4mm釘がめり込むと約半分の強度に低下すると云う結果が出ています。

要するに、釘を打った後の面材の厚みが薄ければ薄い程、強度が低下すると云う事です。1枚の新聞紙を押しピンで壁に留め、下に引っ張ると、容易に千切れますが、新聞紙を3枚重ねて押しピンで留めたものを、先ほどと同じ力で引っ張っても千切れません。これが厚みによるせん断力の違いです。

一般的に構造用面材は、9mmの厚さの物を使用しますが、4mm釘がめり込むと、残りの厚みは5mmになるため、元より5mmの面材を、釘のめり込み無く取付けた状態とほぼ同じと云えます。設計通りの強度を得るためには、上の挿絵にあるように、面材の表面と釘頭が揃った釘のめり込みが無い状態にしなければいけないと云う事です。

釘の重要性を理解しておらず、釘のめり込みなど全く気にしていない大工さんが非常に多いです。私が過去に検査している多くの建物で、釘のめり込み、釘間隔不良、釘打ち忘れ、釘の端空き不良等の是正を行っています。言い換えると、構造用面材の釘の不具合により、設計強度を満たしていない建物が沢山あると云う事です。次回「耐力壁 その2」では、その実態を掲載します。